タイトル 「障害者 情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法案」 (目的) 第一条この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、すべての国民が、情報アクセス及びコミュニケーションの困難の有無によって分け隔てられることがない共生社会を実現するため、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障する施策に関し基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の地域生活と社会参加の支援等のための具体的な施策を総合的にかつ計画的に推進することを目的とする。 (定義)  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。  「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 2「言語」とは、音声言語及び手話言語その他の形態の非音声言語をいう。 3「コミュニケーション」とは、音声、手話、筆談、点字、文字表示、わかりやすい言葉、拡大文字、指文字、また実物や身振りサイン等による合図、触覚等による意思疎通、また手話、要約筆記、指点字、触手話、手書き文字、朗読等の通訳者や説明者等の人的支援、及び補聴援助システムその他の情報支援技術を利用した補助的及び代替的な手段をいう。 4「コミュニケーション支援者」とは、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者への触手話 及び指点字等を使った通訳・介助者、視覚障害者への代読や代筆を含む同行援護従業者、知的障害者、精神障害者、発達障害者及び失語症者等言語障害者とのコミュニケーションを支援する者、重度の身体障害者に対する意思の疎通を図る者等をいう。 5「情報アクセス」とは、障害者が、自ら選択する言語、その他のコミュニケーションにより情報を取得、利用することをいう。 6「情報アクセシビリティ」とは、障害者が円滑に情報を取得し及び利用し、その意思を表示し、並びに他人とのコミュニケーションを図ることができるようにすることをいう。 (基本理念について) 第三条  障害者は、障害のない者と平等な生活を営むため、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションが保障される権利を有する。 2 何人も、障害者に対して、情報アクセス及びコミュニケーションの困難を理由として差別してはならない。また障害者が必要とする情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの権利利益を侵害することとならないよう、必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 3 情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障にかかる費用については、障害のない者との公正及び平等の確保の観点から、その負担を一方的に障害者に求めることのないようにしなければならない。 (国及び地方公共団体の責務) (第四条) 国及び地方公共団体は、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障する環境を整備し、障害のない者との公正及び平等を確保しなければならない。 二 国及び地方公共団体は、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障について国民の理解を深める施策を講じなければならない。 2 国は、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に係る施策を総合的かつ計画的に実施しなければならない。 二 国は、地方公共団体が実施する情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に係る施策に関し、必要な財政上の措置を行わなければならない。 三 国は、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に係る実態を把握し、その状況を広く国民に公表しなければならない。 3 都道府県は、都道府県における情報アクセシビリティ及び専門性の高いコミュニケーション保障に係る施策を実施しなければならない。 二 都道府県は、市町村と連携を図りつつ、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障する環境の整備を行わなければならない。 4 市町村は、市町村における情報アクセシビリティ及びコミュニケーション保障に係る施策を実施しなければならない。 (事業者の役割) 第五条  事業者は、社会のあらゆる分野において、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障し、障害のない者と同等の利便を図らなければならない。 (障害者基本計画の策定及び推進) 第六条  国及び地方公共団体は、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障する環境を整備するために、障害者基本計画において、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障をそれぞれ一つの独立した施策として位置づけ、総合的かつ計画的に推進しなければならない。 (委員会の設置及び監視等) 第七条  国及び地方公共団体は、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に係る施策を策定するにあたり、情報アクセス及びコミュニケーションに困難のある障害当事者、コミュニケーション支援者を中心とする独立した委員会を置き、その委員会において意見を求めなければならない。 2.委員会の運営においては、情報アクセス及びコミュニケーションに困難のある多様な障害者の特性に応じた配慮が提供されなければならない。 3.国及び地方公共団体が設置する上記の委員会は、本法の目的に基づく施策が実施されるよう監視し、必要に応じて、国、地方公共団体及び事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。 (医療、介護等に関する施策) 第八条  国及び地方公共団体は、医療、介護等における情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に関する施策を次の通り講じなければならない。 1 障害者に対し、医療、リハビリテーション、介護及び保健等に関する情報アクセシビリティを確保し、また医療、リハビリテーション、介護及び保健等に従事する者と障害者とのコミュニケーションが保障されるよう、コミュニケーション支援者を配置する等の環境を整備する。 2 医療、リハビリテーション、介護及び保健等に従事する者が、障害者について熟知できるよう、当該従事する者の養成課程において教育及び研修を実施する。 3 医療、リハビリテーション、介護及び保健等に従事する者を使用する事業者は、障害者に対して医療、リハビリテーション、介護及び保健等に関する情報の提供を適切に行い、障害者と医療、リハビリテーション、介護及び保健等に従事する者とのコミュニケーションが保障されるよう、コミュニケーション支援者を雇用する等の環境を整備する。 (教育及び療育に関する施策) 第九条  国及び地方公共団体は、教育及び療育における情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に関する施策を次のとおり講じなければならない。 1 障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育及び療育が受けられるようにするため、情報通信技術の活用、情報アクセシビリティの確保、アクセシブルな教材(点字図書、拡大図書、音声図書、電子図書、ルビ付き図書、手話映像、字幕映像等)、コミュニケーション補助機器の提供(筆談具、ヒアリングループ等)、コミュニケーション支援者の配置等のコミュニケーションを保障する。 2 教育及び療育に従事する者が、障害者について熟知できるよう、当該従事者の養成課程における教育及び研修を実施する。とりわけ、個別性が高く特別な教育的配慮が必要な障害児・者についての相談支援ができる機関と教員養成機関を設置する。 3 教育及び療育に従事する者を使用する施設及び教育機関の管理者が、障害児及びその保護者に対し、療育及び教育に関する情報の提供を適切に行い、教育及び療育に従事する者とのコミュニケーションを保障する環境を整備する。 (職業及び労働に関する施策) 第十条  国及び地方公共団体は、職業及び労働における情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に関する施策を次のとおり講じなければならない。 1 障害者が職業選択に関する情報を十分に取得し利用できるよう提供するとともに、職業相談、職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施において、コミュニケーションの保障が行われるよう、必要な施策を講じる。 2 障害者を雇用する事業者に対して、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障する環境の整備、コミュニケーション支援者の雇用等、そのために必要とする費用の助成その他必要な施策を講じる。 3 事業者が、障害者の雇用に対し、職場における情報の提供及びコミュニケーションの保障を行うことにより、その雇用の安定を図るよう努めるとともに、障害者が安全かつ健康に働けるよう情報アクセシビリティ及びコミュニケーションが保障される職場環境を整備する。 (施設の利用、移動に関する施策) 第十一条 国及び地方公共団体は、施設の利用、移動における情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に関する施策を次のとおり講じなければならない。 1 自ら設置する官公庁施設、交通施設(車両、船舶、航空機等の移動施設を含む)その他の公共施設、民間の屋内及び屋外の施設(宿泊施設、住居、医療施設、職場等を含む)について、障害者に情報が適切かつ確実に伝えられるようにするとともに、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障する環境を整備する。 2 障害者の移動支援において、移動に伴う情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に必要な施策を講じる。 (相談における情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に関する施策) 第十二条 国及び地方公共団体は、相談における情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に関する施策を次のとおり講じなければならない。 1 障害者及びその家族その他の関係者に対する相談支援が適切に提供できるよう、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障する環境を整備する。 2 障害者の特性等を理解し、障害者が自ら選択する言語、コミュニケーションによる情報提供、相談支援等対人援助ができる専門員を雇用又は養成し配置するなどの必要な施策を講じる。 (文化、スポーツ及びレクリエーションに関する施策) 第十三条 国及び地方公共団体は、文化、スポーツ及びレクリエーションにおける情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に関する施策を次のとおり講じなければならない。 1 障害者が文化芸術活動に円滑に参加でき、スポーツ又はレクリエーションを行うことができるようにするため、文化芸術、及びスポーツ等に関する情報アクセシビリティ、並びに文化芸術活動及びスポーツ(通常のスポーツ大会、障害者スポーツ大会等)に参加するためのコミュニケーションの保障に必要な施策を講じる。 2 障害者が、文化芸術、スポーツ等を鑑賞するために使用する施設において情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障する環境を整備する。 3 障害者が自ら選択する言語及びコミュニケーションの特性を活かした文化芸術活動の支援に努め、その普及に必要な施策を講じる。 (情報通信アクセシビリティに関する施策) 第十四条 国及び地方公共団体は、情報通信アクセシビリティに関する施策について、障害者が利用しやすい電話、ファックス、電子メール等の情報通信機器及び電話リレーサービス等の情報通信システム(インターネットを含む)の利用、提供及び環境整備並びに機器の開発及び利用の普及が図られる等必要な施策を講じなければならない。 (放送アクセシビリティに関する施策) 第十五条 国及び地方公共団体は、放送アクセシビリティに関する施策を次のとおり講じなければならない。 1 情報アクセシビリティを保障するため、手話、字幕、音声解説等を付加するなど電気通信及び放送その他の情報の提供を行い、情報を取得し利用するための環境整備並びに放送機器の開発に必要な施策を講じる。 2 障害者が主体となって行う放送サービス、もしくは既存の放送を補完する放送サービス等に対し、そのために必要とする費用の助成その他必要な施策を講じる。 (映像及び活字による文化に関する施策)  第十六条 国及び地方公共団体は、映像及び活字による文化における情報アクセシビリティ及びコミュニケーションの保障に関する施策について、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションを保障するため、手話、字幕、音声解説、点字、拡大文字、テキストデータ等にて映像及び活字による文化を享受できるよう必要な施策を講じなければならない。 (情報アクセス・コミュニケーション支援機器の開発及び整備に関する施策) 第十七条  国及び地方公共団体は、情報アクセス・コミュニケーション支援機器の開発及び整備に関する施策について、情報アクセシビリティ及びコミュニケーション支援機器の開発・研究を援助するとともに、機器等の国際標準化を促進し、並びに利用の普及が図られるよう、必要な施策を講じなければならない。 (防災及び防犯に関する施策) 第十八条 国及び地方公共団体は、防災及び防犯に関する施策について、障害者が、あらゆる施設、住居等において、災害時の緊急連絡を迅速かつ的確に受けられ、かつ発信できるシステムを整備し、災害及び防犯に関する情報の適切な提供を行うための必要な施策を講じなければならない。 (コミュニケーション支援者の養成に関する施策) 第十九条  国及び地方公共団体は、コミュニケーション支援者の養成と認定、研修を行わなければならない。 (コミュニケーション支援者の雇用、派遣に関する施策) 第二十条  国及び地方公共団体は、コミュニケーション支援者を配置しなければならない。 2 国及び地方公共団体は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の定めにより、コミュニケーション支援者の雇用、任用、派遣を行う事業を全国共通の仕組みにより行わなければならない。 二 国は、コミュニケーション支援者を雇用、任用、派遣する事業を担う事業者に関して必要な事項については政令で定める。 3 事業者は、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年7月25日法律第123号)に基づき、障害者の求めがあれば、公共の福祉に反しない限りにおいてコミュニケーション支援者を雇用し、または派遣制度を利用しなければならない。その負担が過重なため雇用、または派遣が困難な場合は、国及び地方公共団体が、事業者に対してコミュニケーション支援者の雇用、派遣のための助成措置を行う。 (情報アクセシビリティ及びコミュニケーションが保障されない場合の救済) 第二十一条  国及び地方公共団体は、情報アクセシビリティ及びコミュニケーションが保障されないことによる差別を是正するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)、または障害者の雇用の促進等に関する法律の定めるところにより、必要な施策を講じなければならない。 2 障害者は、情報へのアクセシビリティ及びコミュニケーションが保障されなかった場合の損害及び名誉を回復される権利を有する。