2018年1月、旧優生保護法の被害に関する全国初の国家賠償請求訴訟が仙台地裁に提起されて以降、全国各地で国家賠償請求訴訟が提起されました。原告の中には、何も知らされずに妊娠中絶や強制不妊手術を受けさせられたろう者もいます。
全通研は、1974年の発足当初から全日本ろうあ連盟と共同し、ろう者の権利保障をめざした手話通訳活動や学習を続けてきました。優勢思想の定義「遺伝的に優良な形質を保存しようとすること」(大辞林)は、権利保障の観点から手話通訳をとらえる全通研の理念とは相容れないものです。
全通研は全都道府県に支部があり、全国各地での優生保護法訴訟では、それぞれ地域の支部が全日本ろうあ連盟や関係団体と連携し、手話通訳や支援活動に積極的に関わっています。2024年の代議員会では、「優勢思想のない社会と優生保護法訴訟の原告の勝訴を求める」特別決議を行いました。最高裁判所大法廷は、2024年7月3日、原告の主張を支持し、勝訴判決を下しました。この歴史的な判決では、原告の主張に沿い、優生保護法の下で強制された不妊手術について、「立法当時の社会状況をいかに勘案したとしても、正当とはいえないものであることが明らか」と当初からの違憲性を明言し、国の除斥期間の主張を「信義則に反し」「権利の濫用」として一蹴しました。さらに国に対して、被害者への謝罪や保障、障害者差別を解消する取り組みを命じています。
全通研はこれからも、優勢思想や差別のない社会の実現を目指して、関係団体と共に運動を進めていきます。
全国手話通訳問題研究会(全通研)は、聴覚障害者福祉と手話通訳者の社会的地位の向上を目指して、手話や手話通訳、聴覚障害者問題についての研究・運動を行う全国組織です。全47都道府県全てに支部を置き、聴障害者団体と共に地域の福祉向上のための活動や学習を行っています。
また、機関誌として『手話通訳問題研究』(研究誌)の発行、研究図書等の出版を行い、聴覚障害者問題の啓発に努めています。会員には手話通訳を職業とする人から手話を学ぶ人まで幅広くいます。