■国際交流
第16回世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局代表者会議(WFD RSA/P 代表者会議)
期間:2004年12月9日〜11日
場所:サリ・パン・パシフィックホテル (インドネシア、ジャカルタ)
参加国:中国、香港、インドネシア、イラン、日本、マカオ、マレーシア、パキスタン、フィリピン、シンガポール、タイ の11カ国代表者 18人
全通研派遣者:浅井貞子、米野規子
(以下、会議日程、各国レポートについては全日本ろうあ連盟ホームページを参照してください。ここに書いているものは概略です)
1 開会
2 議長 小椋事務局長(日本) 副議長 ボンテム運営委員(タイ)
出席確認、自己紹介
3 プログラム確認、第15回代表者会議の議事録承認、議題案の承認、AP事務局会計報告
4 事務局長報告
フィジーろう協会の加盟、国連ESCAP会議(権利条約、BMF)報告等
5 APCD(アジア太平洋障害センター)の紹介
APCDからサランパット・アヌマトライキ事務所長とJICAの障害プログラム専門家の伊藤奈緒子氏が特別ゲストとして出席。APCDの活動をビデオで紹介。
6 加盟国からの報告
- 中国
- 約200万人のろう者、難聴者がいる(1987国勢調査より)中国ろう者協会は1956年創立。現在は世界ろう連盟とアジア・太平洋地域支部の正会員
教育、雇用、手話、バリアフリーコミュニケーション等について現状と課題を発表(レポート配布) - 香港
- ろう教育に関する調査の結果、口話法で教育を受けた子どもよりも、手話で教育を受けた子どものほうが早く書記言語、その他の言語的スキルを身につけることが分かった。(レポート配布)
- 日本
- 日本障害フォーラムの設立、全国手話研修センター設立、手話通訳制度、災害時における情報・コミュニケーション保障、デフリンピックへの派遣、会員数の連続減少、JICA委託事業の方針変更等を発表(レポート配布)
全日本ろうあ連盟の発表後、全通研からの呼びかけをしたい旨を提案、承認を受ける。- アジア各国の手話通訳者が集まり情報交換し交流を深めることにより、手話通訳者の資質の向上、啓発、普及をしたい
- WASLI(世界手話通訳者協会)の結成に向けてアジアの手話通訳者ネットワーク作りをすすめたい
- 全通研の紹介(目的や会員構成、活動内容についての紹介)
- アジア諸国の手話通訳者団体について情報提供のお願い(アンケートの記入協力依頼)
- インドネシア
- 手話辞典の編集、手話の普及等について現状と課題について報告。政府が口約束を守らないことに対する不満を述べた。(レポート配布)
- マカオ
- 約400人の聴覚障害者がいる。手話の本を発行。マカオろう協会創立10周年を祝った。(レポート配布)
1日目の予定終了。夕食後に手話通訳者の現状等について情報交換会をする旨、小椋事務局長より提案。承認される。
2日目 前日の新聞「ジャカルタポスト」に掲載されたA/P事務局代表者会議に関る記事を紹介
(各国からの報告の続き)
- マレーシア
- 23000人の聴覚障害者がいる。アメリカとフィンランドの支援で手話のCDROMを製作した。手話通訳者養成の研修会を開催。これまでJICA研修生はマレーシアろう協会が推薦していたが、今年は政府が推薦するが優先された。新設のろう学校で試験的に2クラスを設け、一方は手話、もう一方は口話法で教えた結果、手話で教えたクラスのほうが成績が良った。これにより、政府が聾学校における手話教育の重要性を認めるようになった。
- イラン
- 現在約500人の会員がいる。2006年の代表者会議主催国に立候補する予定。A/P事務局のロゴマークを作る提案をしたが、新しいロゴが決定したばかりであることから却下された。政府は手話教育を口話教育に替える政策を実行している。イランろう者センターは50%ほど完成している。(レポート配布)
- パキスタン
- 全日本ろうあ連盟からの支援でパキスタン手話の本を1000部発行。IT普及のためにCDロムを作成。JICAの支援を受けて、ろう学校を運営している。2009年のAP会議の主催国として立候補を考えている。現在国内に10の加盟協会がある。リーダーシップ研修、ろう者の調査、職業訓練などが必要。2005年には色々な国をパキスタンに招きたい。(レポート配布)
- フィリピン
- 以前は30あった地域ろう協会が、運営の困難から15に減った。国内標準手話を開発する前に、先ず地方の手話や方言を尊重したい。日本財団の『手話辞典計画』のフィリピンでの取組みに関する報告(レポート配布)
1990年頃にジェームズ・ウッドワード博士がフィリピン手話の研究を行うことを、健聴の言語学者に勧めた。手話の教材は、手話通訳養成と、手話の重要性に関する啓蒙には非常に重要である。 - シンガポール
- ろう者に関するビデオやポスターを作製して、ろう者に関する啓蒙に努めた。
- タイ
- (CDとしてレポート配布) DPIと協力して障害者支援に関わる予算の増額を要求。手話通訳つきのテレビ番組が増えた。手話開発の研究。手話の教本やCDの製作。ミャンマーのろう者への支援(手話に関する支援)。大きな問題は手話通訳者の不足。認定通訳者は4人だけ。
- カンボジア
- (DDPアドバイザーのジャスティン・スミス氏(ろう者)による報告)
2名の若いカンボジアのろう者が会議に参加できるように支援した。海外に出るのは初めての経験。カンボジアにいるろう者は推定約30万人。DDP(ろう者開発計画)は手話で教える学校を2つ運営している。1つは15歳未満の生徒で、もう一つは15歳以上の生徒を受け入れている。カンボジアにろう協会はなく、多くのろう者は孤独な人生を送っている。有望なろうのリーダーも少ない。課題は教育を受けたことのないろう者、情報を得る手段を持たないろう者、手話通訳がいない現実、手話通訳に関する知識もないろう者がいること、国の法律や製作にまったくろう者のことが記されていないこと等。
7 「WFD RSA/Pろう青年キャンプ要綱(案)」の検討と承認
今後の青年キャンプの主催国の決定 2005年の開催希望国はなし
2006年の開催国にフィリピンと日本が立候補。11カ国の有効投票数のうち、日本が6票、フィリピン5票で日本に決定。
8 欠員となっていた運営委員(MC)2名の補充選挙
投票の結果、香港のKo Nam氏、フィリピンのラファエル・ドミンゴ氏が当選。
小椋事務局長、タイのボンテム氏、ネパールのジョシ氏とともにMCの任務につくことになった。
9 今後のWFD RSA/P 代表者会議の主催国の決定
- 2005年の主催国である中国ろう協会のプレゼンテーション
上海で開催予定。参加者は9/18に中国到着。会議は9/19〜20
閉会式が9/21の午前。午後は観光。代表者登録費はUS$50、オブザーバー登録費はUS$400。プロジェクター、コピー機、その他の機材は用意できる。イスラム信者の食事には配慮できる。 US$100をA/P事務局に寄付する。A/P地域の未加盟国を招待する予定(事務局とともに検討) - 2006年の開催国にマカオが立候補
イランも立候補の希望を提出したが、書類不備のためマカオに決定。
2006/12/2〜5に開催予定 - 2007年には世界ろう者会議の開催に合わせてスペインのマドリッドで開催予定。
イランには2008年に会議を主催するように促す。
10 小椋事務局長よりアンケート提出の依頼
11 2005年活動計画は提案どおり承認。
予算案は、全日本ろうあ連盟からの支援金が決定していないため、まだ決定できないことが報告され、了解された。
手話通訳に関する意見交流会
通訳者組織がある国:タイ、フィリピン、香港、日本
1.通訳依頼、通訳現場での問題等
- ろうあ協会が決めたルールに通訳者が反対している。病院へ行くときは、病院で通訳者を依頼する方法。技術に関する規定はなく、個人的な都合で通訳派遣を実施している(タイ)
- 家族に通訳を依頼することも多い(フィリピン)
- フィリピンの手話を集めて、手話辞書を作る団体がある。手話通訳の中には、キリスト教関係者が多い。(フィリピン)
- 手話通訳者が会議で通訳をすると、ろうあ者よりも先に手話通訳が答えることがある。おかしい。ろう者が判断して答えるべき。
- 手話通訳者がルールを守れないことで大きな問題が起きた。裁判のときなどは、手話通訳者が適正に通訳しているか、第3者がチェックしたりする必要があるかも。また、通訳者を保護する制度も必要。(マカオ)
- ろう者が家族が亡くなり、遺産相続の権利があるが、健聴者の家族だけで話し合って分配されたために、ろう者がもらえないケースがあった。また、裕福なろう者は、手話通訳者にお金を払って通訳してもらうケースがある。(イラン)
- 手話通訳者が同行したために、エイズであることを漏らしてしまい、守秘義務が守られていなかった。(タイ)
- 日本の手話通訳者がルールを守らなかった場合、どう対応するのか?→日本では通訳者の技術に個人差もあり、ルールを守れていないケースもある。
法律等での罰則規定はない。日本には手話通訳士資格を持った人の団体と、手話を勉強したり、ろう者と交流したい人の団体の2つがある。手話通訳士協会の規約(手話通訳士倫理綱領)があるので、参考に見てください。
2.手話通訳者養成について
- 手話通訳者の勉強の方法はどうしているのか?
- 手話学校へ通ったり、大学の中で手話通訳を勉強したりしている。
- 大学で手話を教えている。交流の中で覚える人もいる。キリスト教会でも手話を使うケースがあり、教会の中で手話を学んでいる人もいる。(フィリピン)
- 健聴者の学校の子どもに手話を教えて、大きくなれば手話通訳になれればいいのでは。そうすれば手話通訳者の養成の問題はなくなるのではないか。
- 難聴者に手話通訳の資格取得を認めてもいいのか?ろう者としては、正確に聞こえているのか心配
- 健聴者だけが手話通訳を担うのではなく、ろう者も手話通訳(健聴者通訳とろう者のパイプ役のような通訳)をすれば、よりろう者にとって分かりやすい通訳になるのではないか。
- 手話通訳を発展させるには、それぞれの国の現状を理解してほしい。規則、ルールも必要だけど、政府に対して手話通訳が必要だという証明をしていくことも必要。国民から税金を集めて、それをもとに手話通訳者養成の学習の場を作っていくのはどうか。(タイ)
- 日本手話だけでなく、国際手話もできる通訳者を養成したい。
3.これからのアジア手話通訳者のネットワーク作りについて
- AP手話通訳者団体を設立した場合、どこの傘下になるのか?もし設立した場合、いろんな国との関係を持つだけでなく、自国の政府とのパイプを持つ必要もある。アジア各国で手話通訳者が大勢いて交流していることを政府にも把握・理解してもらう必要がある。
- 手話通訳者ネットワークの運営は、ろうあ協会が担うべき。理由は手話はろう者のものだから。政府からろう協会に補助金をもらい、ろう者が手話通訳者団体の運営をするべき。
- 手話通訳者は健聴者だから、ろう協会に関係なく、設立したらいいのでは。
- アジア太平洋レベルで、手話通訳者が集まって交流する場を持ちたい。次回のこの会議には、通訳者も連れてきてほしい。
- 手話通訳者を同行するようにすると、各国で交通費などの自己負担が増えるので、AP会議事務局でも、何らかの対応を検討したい。
「アジア手話通訳者ネットワーク作りの呼びかけ」
国際交流担当 米野規子
全通研国際交流担当として、WASLI(世界手話通訳者協会)の2005年発足に並行して、アジアの手話通訳者ネットワーク作りの準備を進めています。今年は世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局代表者会議がインドネシアで行われるにあたり、全日本ろうあ連盟の協力を得て、アジア手話通訳者ネットワーク作りの呼びかけを行うことができました。
12月9日〜11日にジャカルタのサリパンパシフィックホテルで第16回世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局代表者会議が行われ、全通研からは2名がオブザーバーとして参加しました。今年の参加はインドネシア、タイ、パキスタン、フィリピン、マカオ、香港、日本、フィリピン、イラン、中国、マレーシアの11カ国でした。
事務局である日本とタイが司会を務め、各国2名の代表者で会議は進められます。昨年度の議事録の確認、今年度の議題の承認の後、予算や各国の報告、審議事項と議事は進行しました。
この会議での公用語は国際手話です。参加国のろう運動の状況や課題が次々と発表され、全日本ろうあ連盟からは、日本障害フォーラムの設立や全国手話研修センター、災害時における情報保障等について発表されました。
その後、日本の手話通訳者団体(全通研)から呼びかけがあるが承認してもらえるかとの質問に、各国から承認をいただき、いよいよアジア通訳者ネットワーク作りについて発表することとなりました。
呼びかけの骨子は、
- アジア各国の手話通訳者が集まり情報交換し交流を深めることにより、手話通訳者の資質の向上、啓発、普及をしたい
- WASLI(世界手話通訳者協会)の結成に向けてアジアの手話通訳者ネットワーク作りをすすめたい
- 全通研の紹介(目的や会員構成、活動内容についての紹介)
- アジア諸国の手話通訳者団体について情報提供のお願い(アンケートの記入協力依頼)
の4つです。
パワーポイントで上記について資料を写しながら、国際手話で発表を行いました。参加国の中には手話通訳者組織がない国も多く、具体的なイメージをどこまで伝えられたのか不安もありますが、アジアで手話通訳者のネットワーク作りについては前向きに受けとめてもらえたように感じられました。
事務局長(全日ろう連小椋氏)から、この日本の呼びかけに対し、各国の手話通訳事情について情報交換するための時間を設けたいがどうか、との問いかけに各国とも賛同していただきました。
夕食後、各国の手話通訳者組織の有無を確認し、ある国については組織の目的、ろう団体との関係について現状を報告していただき、約1時間程度、情報収集と意見交換を行うことができました。
国によって、手話の普及程度や情報保障の環境は様々ですが、手話通訳者に対するろう者の要望は、日本と共通するものが多かったです。手話通訳者の守秘義務の徹底と、手話通訳技術の向上については特にどの国のろう者も、これから改善していく必要性を強く訴えられました。手話通訳者を依頼して、自分の病気について他の人に知られてしまったために、通訳者に対する不信感がおこったことや、手話通訳者がろう者の発言を待たずに通訳者の判断で勝手に答えてしまったこと、通訳者によってろう者に与える情報量が少なかったりするなど、様々な実例を挙げられました。また、手話通訳者を健聴者に限らず、ろう者の通訳を仲介することにより、より分かりやすく通じやすくなるのではという提起もありました。
これらアジア各国のろう者の意見や要望は、これから手話通訳者組織を立ち上げるにあたり、組織の指針のベースとなる貴重なものだと感じました。手話通訳を職業として社会に認知してもらうこと、そして資質向上を目指すことが通訳者集団の主要な目的です。この目的を達成するためには、通訳者だけではなく、ろう者との交流の中で、お互いのニーズを熟知しておく重要性を改めて実感しました。
アジアの中には手話を知らないろう者、また手話でコミュニケーションをとっていても、手話通訳者の存在を知らないろう者もたくさんいることが、各国の報告から明らかになりました。そして手話通訳者が国の中に一人しかいないという国も現実に存在します。日本の手話通訳制度も課題や問題点は多々ありますが、全日ろう連や全通研が運動の中で築いてきた成果をアジアの国に発信し、ともに豊かに暮らせる社会を目指して各国が協力できれば、さらにアジアの福祉を前進させられるのではないでしょうか。
戦争や経済不況、貧困等で生活の安定が保証されていない今のアジア情勢ですが、このアジア太平洋地域事務局代表者会議に参加されているろう者たちは、とてもパワフルに、そして前向きに自国のろう運動について語っていました。一つ一つお互いの手話や主張を確認しながら、明るく民主的に会議を進行される様子はとても感動的でした。
飛び入り参加でレポート発表をした私を暖かい笑顔で受けいれ、様々な情報を提供し、会議以外の場面でも常に明るく友好的に接していただいて、感謝の気持ちで胸が熱くなりました。私たち手話通訳者もこのパワーに負けず、ネットワークを作り活発に情報交換をしていきたいと強く感じました。今回、各国から寄せられた情報をもとに、アジア手話通訳者ネットワーク作りの具体的な道筋をつけていけるよう国際交流担当で検討していきたいと思います。
最後に、この会議で全通研からの発表をさせていただくにあたり、資料提供や記録、通訳、交流等、多岐にわたり多大なご協力とご支援をいただいた全日本ろうあ連盟の方々に厚くお礼を申し上げます。
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